ITシステムコンサル業界の銘柄

■ ITシステム業界の動向

lTシステム業界では、デジタル技術でビジネスを刷新する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」が重要なテーマになっています。DXとは、インターネットなどの最新技術を使って新商品や新サービスを創出したり、既存の業務プロセスを効率化させる取り組みです。あらゆる業種の企業でDXが課題になっています。

ITシステム会社は、DX需要を掘り起こすことで、成長を図っています。具体的には、以下のビジネスを重視しています。

  • (1)老朽化した情報システムの刷新やクラウドへの移行
  • (2)ビッグデータを分析し活用する基盤システムの構築
  • (3)人工知能(AI)を使った業務プロセスの合理化
  • (4)テレワークを含む働き方改革

情報システム大手7社の売上高ランキング(2024年)

順位 会社名 売上高 営業利益
1位 NTTデータ 4兆3673億円 3095億円
2位 大塚商会 9773億円 329億円
3位 野村総研 7365億円 1204億円
4位 伊藤忠テクノソリューションズ 6200億円 580億円
5位 TIS 5490億円 645億円
6位 SCSK 4803億円 570億円
7位 BIPROGY(旧:日本ユニシス) 3701億円 332億円
8位 日鉄ソリューションズ 3106億円 350億円
9位 富士ソフト 2988億円 206億円
10位 ネットワンシステムズ 2051億円 195億円


クラウド市場が拡大

ITシステム会社が近年力を入れてきたのが、「クラウド」事業です。

世界最大手アマゾン(AWS)

クラウド大手としては、世界的には米Amazonの「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」が有名です。AWSは日本市場において、多数の国内システム会社と提携し、クラウド事業を行っています。

野村総研、日立、伊藤忠テクノなどITゼネコン

AWSのコンサルティングパートナーには、野村総合研究所(野村総研)、日立製作所、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、電通国際情報サービス(ISID)などが名を連ねています。これらの会社は、「ITゼネコン」あるいは「ISer(エスアイアー)」と呼ばれ、IT業界の元請けの役割を担っています。

また、日鉄ソリューションズ(旧:新日鉄住金ソリューションズ)も、AWSと連携したシステム構築・運用サービスを提供しています。

アイレット、サーバーワークスなど中堅も

このほか、中堅会社としてアイレット、サーバーワークス、クラスメソッドなどが参加しています。

クラウド事業の場合、中堅規模のシステム会社であっても、大手のクラウドサービスを武器に事業を展開できます。このため、中堅システム会社が、大企業の基幹システム向け基盤整備などの大型案件を獲得するケースも出てきました。

丸紅の基幹システムをクラウドへ移行

例えばサーバーワークスは、AWSのパートナーとして、大手商社の丸紅の案件を受注しました。プライベートクラウドからAWSのクラウドへ、基幹システムの移行を支援したのです。

NTTコム独自のパートナー・プログラム

一方、国内システム大手のNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2014年から、クラウド事業を重視したセールスパートナー向けのプログラム「パートナー・ソリューション・プログラム」を展開しています。

同プログラムでは、クラウドやネットワークなどNTTコム本来のサービスと、パートナーのサービス・製品を組み合わせた支援メニューを提供しています。パートナーブランドでクラウドを提供できるOEM(提携企業の名義による販売)サービスの拡充にも取り組んでいます。

クラウド・インテグレーターとは

クラウド・インテグレーターという業態も注目されています。この業態は、顧客企業に対して、クラウド技術を使った情報システムを提供するものです。日本では、既存の情報システム会社の多くが2010年代以降にクラウド技術を導入。そのうえで、クラウド・インテグレーターとして様々なサービスを提供するようになりました。

コンサルティングを強化

クラウドサービスの分野では、サービスのコモディティ化が進んでいます。そこで、インテグレーター各社は他社と差異化するために、クラウド導入のコンサルティングを強化しています。

クラウドブローカー

複数のクラウド環境やクラウド技術をハイブリッド化してサービスを連携させるクラウドブローカーも登場しています。そうした複合的なクラウド体制の運用・保守を請け負う「マネージド・サービスプロバイダー(MSP)」として活動する企業もあります。

案件の規模が小さい

クラウドインテグレーションの案件は、大型システムの構築案件と比べると、一つ一つの規模は比較的小さいです。競争激化に伴って利益率が下がると、競争力のない事業者は撤退を余儀なくされると予想されています。


■ エクシブ投資顧問のITシステム業界推奨株の評判・口コミ

「エクシブ投資顧問(旧:株オンライン)」の推奨株の評価を紹介します。東証ジャスダック上場のジェクシードなど。

ジェクシード(2020年9月推奨)

業種 情報システムの導入・運用サポート
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
174円
(2020年9月16日)
推奨後の高値 245円
(2020年11月26日)
上昇倍率 1.4倍
現在の株価 こちら→
市場 ジャスダック
(2003年9月、上場)
設立 1964年
証券コード 3719


ジェクシードとは

ジェクシードは、企業向け情報システムのコンサル会社である。「ERP(統合型の情報システム)」関連のコンピューター・ソフト販売や導入サポートを行う。

企業の業務システムのうち、会計分野を得意としている。人事・労務システムにも強みがある。

顧客は、上場企業や中堅企業など。日産自動車をはじめとする主要取引先3社が、全体の売上高の4割を占める。

公認会計士・税理士

ジェクシードが会計関連のシステムを得意になった理由は、公認会計士・税理士を社内に多く抱えてきたためだ。

会計や税務の専門家が、顧客企業に対してコンサルティングを行う体制を早期に確立させた。業務改革をしながらシステムを導入する取り組みをサポートしている。

法改正によるシステム更新

会計システムの構築・運用には専門知識が必要だ。このため、参入障壁が高い。

さらに、法律の改正によって制度が変更されるたびに、システム更新の需要が発生する。これによって、安定的に収益が得られる。例えば、四半期決算の導入などが過去に追い風になった。

コンサルティングの売り上げのうち、既存顧客からのリピートオーダーが占める比率が高いのも特徴だ。

人事労務システムにも強み

近年では、「HCMソリューション」と呼ばれる人事・労務系システムも伸びた。これは、2010年代の安倍内閣による働き方改革の取り組みが追い風になった。

人材の能力管理システムなどを提供しており、顧客企業の人材の有効活用に貢献することを目指しているという。有名どころでは、日産自動車などに採用された実績がある。

創業時は建設会社

もともとジェクシードは、建設会社としてスタートした。設立は、東京オリンピックが開催された1964年にさかのぼる。当初は「細谷組」という会社名だった。

社名を「ビジネスバンク」に

1995年、社名を「ビジネスバンク」に変更した。それに伴い、情報システム関連のコンサルティングを開始した。さらに、2000年4月に社名を「ビジネスバンクコンサルティング」に変更した。

「ERP」の波に乗る

エクシブ投資顧問によると、ジェクシード(当時:ビジネスバンク)は、企業のIT化の波に乗ることに成功した。とりわけ「ERP」と呼ばれる企業向けのソフトの販売で売り上げを伸ばした。ERPとは、企業の業務改善・合理化を手助けするツールである。1990年代後半以降、ニーズが増加した。

SAPやJDエドワーズを採用

ERPは、様々なソフトを組み合わせてパッケージとして売られる。ジェクシードの場合、基幹部分については、ドイツのSAP社製の「R/3」、米JDエドワーズ製「OneWorld」といった海外の製品を活用していた。

こうしたパッケージソフトではカバーしきれない部分を、自社のツールまたはソフトとして開発した。なお、JDエドワーズは2003年にピープルソフトに買収され、さらにピープルソフトは2004年にオラクルに買収された。

上場

2003年9月に東証ジャスダックに上場した。

立役者・大島一成社長

上場へと導いた立役者は、大島一成(おおしま・かずなり)社長(当時)である。 大島氏は税理士の家庭に生まれた。2003年9月の上場時点で、株主保有率61%の筆頭株主だった。

社名を何度も変更

2006年、社名を「ビジネスバンクパートナーズ」に変更した。2007年に純粋持株会社制を導入。2007年「BBH」と商号変更し、2012年にジェクシードという社名になった。

中野サンプラザの民営化を成功

ジェクシードが一般に注目されるようになったのは、「中野サンプラザ」(東京都中野区)の民営化のときだ。

厚労省系の特殊法人が建設

中野サンプラザは、老舗のコンサートホールやホテルなどの複合施設だった。もともとは厚生労働省(旧労働省)所管の特殊法人「雇用促進事業団が建設」し、1973年に開業した。若者向けのコンサート会場として有名になった。

新しい所有会社に出資し、社長に就任

しかし、経営は赤字が続いていたため、事業団が独立行政法人に切り替わるのに伴って、2004年12月に民営化された。エクシブ投資顧問によると、民営化後は、東京都中野区などが出資する第三セクター「まちづくり中野21」が施設を所有する形になった。この「まちづくり中野21」には、ビジネスバンクコンサルティング(現ジェクシード)も間接的に出資した。さらに、まちづくり中野21の社長を、ビジネスバンクコンサルティングの社長でもあった大島一成氏が引き受けた。

また、施設の運営は「株式会社中野サンプラザ(NSP)」が引き受けた。この株式会社中野サンプラザの会長も、大島一成氏が務めた。

会計システムを受注

そのうえで、「株式会社中野サンプラザ(NSP)」は2005年8月、ビジネスバンクコンサルティング(現ジェクシード)との間で、会計システムのリース契約を結んだ。5年契約で、総額は約4000万円だった。

コストダウンで黒字化

中野サンプラザは、民営化によってコストダウンが図られた。その結果、経営は黒字に転換した。「民営化の成功例」と称賛されていた。しかし、これらの一連の取引における透明性の欠如が問題となり、ビジネスバンク(現ジェクシード)は撤退した。

「データ活用」や「クラウド移行」が伸びる

2010年代になると、主力のERP分野では、日本の大企業における導入が一巡した。その一方で、バージョンアップやクラウドへの移行が増え、業績を支えた。とくに「管理会計」や「データ活用」など用途で需要が伸びた。

また、中堅企業やベンチャー企業の間でも、ERPの新規導入の引き合いは強くなった。